新成人への御挨拶(永久使い回し版)



2002年1月14日(月)成人の日


え〜、このたびは、晴れて「成人」となったとの事でおめでとうございます。


しかし、まあ、よく20歳(はたち)になるまで、こうして無事に生きて来たなあ、と思った事はないでしょうかねえ。


皆さんと同じ年に生まれ、この日を待たずしてこの世から消えていった「命」も数えれば、切りがない事でしょう。


ほら、あの二階の角側の席が見えますか?


青年が足を投げ出して、たむろしている席から右上に三つ目の席ですかね。


あそこに3人の霊がいますねえ。


小学生の頃、海で溺れたようですね。


みんな身体が濡れてますね。


男の子ですね。


ほら、あそこでお酒を呑んでいる子の横にも女の子が一人坐っていますね。


さっきから、この前を行ったり来たりしている子もいますよ。


まわりには、皆さんの亡くなった御両親なのですかね?


兄弟姉妹もいるようですね。


かなりおみえになってますよ。


ここからだと、よく見えるんですね。


皆さんは、こうしてようやく「成人式」まで生きる事ができました。


それをみんな羨(うらや)んでいるようですよ。


毎年、必ず、皆さんの内の誰かの家にまで付いて行くそうですから、あまり目立った行動を取るとあぶないですよ。


その後、何もよい事のない一生が待っているそうです。


今日を最後に何も祝い事がないそうです。


カア〜たまらん人生ですねえ。


一応、念のため忠告しておきますよ。


しかし、こうして無事、「成人」となるまで、生きてこれたからと言って、皆さんがこれからも無事とは限りません。


必ず、今年も皆さんの中から誰かがこの世から消えて行くでしょう。


あるいは、今日、この帰りに何かあって人生が終るかもわかりませんね。


よくある事ですね。


人生は、この先に何があるか誰もわかりません。


他人事ですが、20歳(はたち)になったら、もう人生この先、大して何もよい事は起こりません。


結婚ですか?


まあ、そうかもしれませんが、すぐに別れるかもしれませんし。


子供が生まれたって言っても、親に似た阿呆だったらもう何の望みもありませんね。


「たった今、人殺して来た」って言ってある日、家に帰って来るかもわかりませんね。


まったく、やれやれですね。


本当に、この先はそんなにいい事なんかないと思いますよ。


まわりの「大人」を見て下さい。


大変そうでしょう?


でなきゃ、こんな所に来ませんよ。


まあ、あそこで大騒ぎしている集団がいますが、別に「成人」になったから騒いでいるわけではないのですね。


今日が、もし、「還暦の日」であったとしても、たぶん大騒ぎする60歳がいると思いますよ。


飲み屋にもたくさんいますからね。


「差」がついてしまった、と思っているんですよ。


人生にね。


同じ年に生まれたのにってね。


20歳の者も60歳の者も同じなんですね。


まあ、まわりもね、自分たちは、ああはならないって思ってるんですけどね。


でも、わからないですよ。

ある日、孫が家に帰って来て、「たった今、人を殺して来た」って言うかもしれませんよ。


自分が築いて来た人生が、阿呆孫のためにパアですね。

うすうす息子は、阿呆じゃないかって疑っていた事が、孫の代に証明されたわけですね。



皆さんの親の世代?


そりゃあもう阿呆が多かったですよ。

まだ、子供の皆さんの前では言えませんでしたがね。

もう、言っていいでしょ。

皆さんの親、ホント、阿呆ばっかりでしたよ。

もう、こうした事が、かれこれ12,3年は続いてますね。

えっ?阿呆ってどういう人って?



う〜ん、阿呆ってのは、何でしょうねえ。


簡単に言えば、子供相手に、自分が一番頭よいって言ってる奴ですかねえ。


だから、勉強できる、できないとは関係ないですねえ。


とにかく、利口な人は、大体、同じなんですが、阿呆に関しては、もう様々ですね。


その中の何とかという種類の阿呆が、「当たる」のですね。


だから、簡単に、阿呆だから、とも本当は言えないんですけど。



そんな事より、私は、かねがね不思議に思っているのですが、皆さんは、一体、何歳まで生きるつもりでいるのでしょうか?


自分は、長生きすると思ってるのでしょうか?


そんな事、断言できませんね。


でも、皆さんは、自分だけは長生きすると思っているのでしょうね。


今日は、大変重要な事を皆さんに伝えたいと思います。


たぶん、学校では、教えなかった事だと思います。


それは、人間は、必ず、死ぬ、という事です。


静かにして下さい。


静かにしないと喋っているフリしますよ。


まじめに聴こうと思っているとイライラして来ますからね。


喋ってもないのに。


とにかくまあ、人間は、必ず、死ぬんですね。


それが一体、何時(いつ)なのか、という事がわからない。


中には、わかっている人もいるわけです。


皆さんと同じ年齢でね。


死んだら、もう何ができないって、まず、散歩ができません。


散歩ができない、という事は、この地球に生きている実感が湧かない、という事ですね。

時折、風が吹いたりする。

時折、蝉(せみ)が鳴いてたりする。


”木枯らしの街を行くひとりっぽっちの私 ”って気持ちも味わえない。


何だか、そっ気ない人生ですね。


えっ?散歩なんかしたくないって?


あなたは、3年内には、必ず死にますよ。


今、呪いをかけました。


もし、3年経っても死ななかったら、必ず、いつか、死にますよ。


あっと言う間にね。


これは、まちがいないですから覚えておくとよいです。


私が、言いたい事は、よく考えたら別にないのですね。


あっそうだ、皆さんは、一体、何時まで生きていると思っているのですかって事ですね。


今日という日まで、たどりつけず、死んだ人がいますね。


皆んなね、まさか、今日自分が死ぬ、あるいは明日死ぬって思ってもなかったんですよ。


皆んな、明日があるさって思って生きてたんですよ。


するとね、明日からは、「あの世」で生きる事になってたんですね。


「この世」のすべての人と突然、お別れしてね。


あれを言っておけばよかった、これをやっておけばよかったって今日の日まで思っていた計画が、突然、終ったわけですね。


だから、「死」は、突然、訪れるのですね。


運命のドアは、突然ノックされるのですね。


死刑囚も、その死刑執行当日、ほんの少し前に突然知らされるわけですね。


1時間後に、執行するからってね。


突然知らされるんですね。


あまり先に知らせるとじたばたするかもしれないですからね。


だから、この世との別れは、突然やって来ます。


神が人間に与えた唯一の「恐怖」ですね。


この会場に来ている人の中にも確実に今年、死を迎える人もいるわけです。


それは、自分じゃないって思っているだけなんですね。


だから、今、生きてここにいる、という事は、本当は、とてもドキドキする事なんですね。


今日という日まで、命があった、という事は、とてもドキドキする事なんですね。


この間まで、高校受験だの、中退だ、大学受験だって言っていた皆さんもあっと言う間に20歳ですね。


たぶん、また、あっと言う間に30歳になりますよ。


きっとあっと言う間ですよ。


私なんかでも、あっと言う間に皆さんの2倍以上の年齢になってしまった。


あっと言う間でしたよ、それはそれは、、、。(しみじみ、、、と遠くを見つめるポーズをする。練習通り。)


皆んなが、あっと言う間って言ってるんですから、やっぱり、あっと言う間に30歳になって、40歳になって50歳になって60歳になって70歳になって、次第に身体も動かなくなり、人生のラストにさしかかるわけですね。


そりゃあ、あっと言う間でしょう。


怖くないですか?


生きてて怖くないですか?


確実に、皆さんも「死」へと向かって歩んでいるんですよ。


私たちはね、そうした限りある人生を刻々と歩んでいるんですね。


命を削って生きているんですね。


死にたくないですねえ。


もっと生きたいですねえ。


でも、皆さんは、不死身なんでしょうかねえ。


ずいぶんと、のんびり生きてますねえ。


この分だと、300年くらい生きてないと、何もできないでしょ?。


知らないですよ。


人生は、あっと言う間ですよ。


あっと言う間に終りますから。


今は、20歳(はたち)ですか?


じゃあ、来年は、もう21歳か22歳なんですか?


あらら、あと8、9年で、30歳じゃあないですか?


世の中を拗(す)ねたり、反抗したり、知ったかぶりしている時間はないですよ。


もう、死ぬ気で何でもやんないと何も身に付かないですよ。



そろそろ時間ですねえ。


とりあえず、30歳までは、生きているだろって願って、毎日を生きて見たらよいですね。


30歳までね、夜寝る時にね、ああ、今日も生きていたって神に感謝する事ですね。


神様がいない人は、とりあえず私に感謝して下さい。


でも、私は、そんなりっぱな神様じゃあないですから、自分のCDを金出して購入した人しか覚えてませんから、買ってない人の事はわかりませんから、どうなっても気にしないと思いますよ。


あっ、忘れてましたが、私は、ミュージシャンです。


ミュージシャンである、という事を誰にも知られずに人生を送ってしまったんですね。



長い間、言うのを忘れてたんですね。


う〜む、私の話しをすると、すぐに欠伸(あくび)をする人が多いですね。



この話しはやめときましょう。


でもまあ、しつこいようですが「幸福の壷(つぼ)」を買うよりは、ずっとCDは安いですよ。


酒呑んで、ゲロ吐きながら、何の実りもない口論をして、翌日後悔するよりは、ずっとよい金の使い方ですよ。


CDは、高校生に盗まれでもしない限り永遠にあなたのそばにありますからね。




あらまあ、皆んな、すっかり寝てますねえ。



わざわざ、これ宣伝しに、ここまで来たというのに。



(こらあ、主催者、何がどうなっとんじゃあ、おう!話しが違うだろうがあ!)


あっ、すっかりまた、起こしてしまいましたねえ。



それでは時間が来たようなので、これで終りですね。



入口の方で、CDを販売してますから、購入した方へは、サイン会もしてますから後でまたお目にかかりましょうかねえ。



それでは、これをもってお祝の言葉に代えさせていただきます。


忘れないで下さいね。


買わない人は、必ず、近々死にますからね、、、、。

(意味不明に手を振って、人気者のふりをしながら退場。練習通り。)





(楽屋にて)

ケッ、何じゃあありゃ、誰も聴いてねえじゃない。



誰かライター持ってないかい?


禁煙ってのは、我慢できないぜよ、まったく。


ところで、ギャラいくら出るのよ、これ。


えっ?外で、若者が暴れているって?


あたりめえじゃないの。


こんな場で暴れない奴が出ないのがおかしいんだよ。


20歳だろうが、何だろうが、これが社会の縮図ってもんよ。


普通の人間がいて、やくざがいるわけだろ。


こればっかりは年齢関係ないぜよ。


だから市が主催して「還暦式」やったってホームレスの60歳が暴れるってもんだよ。


暴れる奴がいて、暴れない奴がいる。


どこでも同じだよ。


それが「社会」だよ。


それが「世界」だよ。


20歳のホームレスがいないだけ、希望があるってもんだよ。


裏社会を彼等で「組織した」って事だろ。


止められないよ。


こっちも「組織」しなきゃね。


なっ?社会そのものだろ。


年齢関係ないね。


それをしかと体験する儀式だなあ。


ああ、これが社会だってね。


成人として受け止めるんだね。


昔なら、戦場行って、死んでるからねえ。


20歳ならもう死んでも十分だってね。


祝福されたいんじゃあないの。


自分は、何もしてあげないでね。


ただねえ、30歳くらいになってね、あそこ行ったって「つっぱり」は、オレには、かっこ悪いんだけどね。


何じゃあそりゃあって。


一匹の獅子じゃないっつーの。


おらあ、成人式があるってのも本当に、知らなかったんだから。


通知だって来なかったんだから。


区民税払ってなかったからなあ。


いや、住民票も移してなかったんじゃあないか。


過ぎた事よ。


どうせ通知が来ても行かなかっただろうなあ。


そう言えば、うちは家族そろってそういう事知らんなあ。


打ち上げ花火見たのも30歳過ぎてたしなあ。


父母そろって人が集まる所が嫌いだったんだなあ。



たぶんな。



20歳の頃のオレは、毎日が、戦(いくさ)だったのよ。


オレの決めた修行とのな。


志し半ばで、晴れがましい席に出るかっつーのよ。


自慢じゃあねえーが、オレは、妹の結婚式も出席しなかった男よ。


オレは、30歳になってたぞ。


その頃、たぶん、東京に住んでたんだなあ。


だから「フーテンの寅さん」の気持ちがわかるのよ。



まあ、しかし、ああした「儀式」は、苦手だなあ。


昭和20年、8月15日以来、私は、一切の団体行動を取りませんってな。


そういう事よ。


でもなあ、泣いても笑っても、あっと言う間だなあ。


人生は。



おっと、そろそろ、式も終りだなあ。



サイン会の準備しなきゃあなあ。



でも、そう言えば、皆んな、オレの事を誰だか知ってるのかなあ。





2002年1月14日(月)午前3時